はじめに
本記事は、UR-Uスクールの財務講義にて竹花貴騎氏が解説した「キャッシュフロー(CF)」についての内容を、自分なりに噛み砕いてアウトプットしたものです。
経営者が「キャッシュフロー(CF)」を正しく読めるかどうかは、会社の存続に直結します。たとえ損益計算書(PL)で黒字でも、CFが悪ければ給与の遅配、借入不能、投資失敗といった経営危機が起こり得ます。
竹花氏は動画の中で、キャッシュフローとは「会社の血液の流れである」と強調しており、これは非常に本質を突いた比喩です。PLやBSに加えてCFを「読める力」を持つことが、経営者・個人事業主・投資家にとって必要不可欠なスキルであることを、この講義では体系的に学ぶことができました。
キャッシュフローとは何か?
キャッシュフロー(Cash Flow、以下CF)とは、会社に出入りする実際のお金の流れを数値で示すものです。利益や資産よりも「手元にある現金がどう動いているか」が重視されます。
キャッシュフローは大きく以下の3つの活動に分類されます。
キャッシュフローの3区分
┌────────────┬────────────────────────┐
│ 区分名 │ 内容 │
├────────────┼────────────────────────┤
│ 営業活動CF │ 本業によるお金の出入り │
│ │(例:売上、仕入れ、給与、家賃、税金など)│
├────────────┼────────────────────────┤
│ 投資活動CF │ 将来の成長のための支出 │
│ │(例:設備投資、子会社への出資、資産売却など) │
├────────────┼────────────────────────┤
│ 財務活動CF │ 資金調達と返済 │
│ │(例:借入、返済、株式発行、配当など) │
└────────────┴────────────────────────┘
これら3つを読み解くことで、「どこで稼ぎ」「どこに投資し」「どうやって資金調達しているか」が明確に見えてきます。
営業活動CF:本業で現金が増えているか?
営業活動によるキャッシュフローは、最も重要なCFです。これは会社の本業(=商品やサービスの販売)から得られる現金の増減を示します。
たとえば、コンビニを例にとると次のようになります:
- 売上(うまい棒を売って得た現金)→ プラス
- 仕入れ(うまい棒の仕入れに使った現金)→ マイナス
- 家賃、広告費、税金などの支払い → マイナス
これらを合算してプラスであれば本業でしっかり稼げている健全な経営であると言えます。
投資活動CF:未来に向けた意思表示
投資活動によるキャッシュフローは、未来のためにどこへお金を投じているかが分かる項目です。
ここでマイナスが大きいからといって「悪い」とは限りません。むしろ、成長中の企業であれば、積極的に設備や新規事業、子会社などに投資をしているためマイナスになるのが自然です。
たとえば、ソフトバンクは本業で稼いだ以上の金額を投資に注ぎ込み、「通信会社」から「投資会社」への転換を体現しています。
財務活動CF:資金調達の手段と姿勢
財務活動によるキャッシュフローでは、借入や株式発行によって得た資金や、その返済による現金の増減を確認できます。
プラスであれば新たな資金を調達している状態。マイナスであれば返済などにより資金が出ている状態です。
このCFを読むことで、「攻めているのか」「守っているのか」が見えてきます。
ソフトバンクのキャッシュフロー分析
講義では、ソフトバンクのCFを実際のIR資料から分析しました。以下のように要点を整理できます。
ソフトバンクのキャッシュフロー状況(年度末)
┌──────────────────────┐
│ 営業活動CF:+1.5兆円(通信事業) │ ← 本業は好調
│ 投資活動CF:−4.2兆円(大量投資) │ ← 攻めている
│ 財務活動CF:+2.3兆円(借入) │ ← 投資の穴埋め
│ 現金残高:+2.2兆円 │
└──────────────────────┘
このように、本業では安定した収益を出しながらも、より大きな未来を見据えて巨額の投資を行い、それを借入で補っている構造が読み取れます。竹花氏は「CFを見るだけで企業の経営方針が見える」と語っていましたが、まさにその通りです。
マネーフォワード vs 武田製薬:CF構造の違い
講義内では、IT系スタートアップのマネーフォワードと、大手製薬会社の武田製薬のCFも比較されました。
2社のキャッシュフロー構造比較
┌───────────────┬───────────────┐
│ マネーフォワード │ 武田製薬 │
├───────────────┼───────────────┤
│ 営業活動CF:マイナス │ 営業活動CF:プラス │
│ 投資活動CF:マイナス │ 投資活動CF:マイナス │
│ 財務活動CF:プラス(上場) │ 財務活動CF:プラス(調達)│
├───────────────┼───────────────┤
│ SaaS型モデル │ 製薬/設備型モデル │
│ スタートアップ特有の構造 │ 安定・成熟フェーズ │
└───────────────┴───────────────┘
マネーフォワードは赤字上場しつつも将来の成長を見据えた投資を継続し、外部からの資金で事業拡大を狙っている構造であるのに対し、武田製薬は営業でしっかり利益を上げ、その中で設備や研究に投資しつつ、資金調達も併用している堅実な構造です。
キャッシュフロー8パターン:企業フェーズの読み方
竹花氏は、CFの3区分の組み合わせで企業の状態を8パターンに分類できると解説していました。
キャッシュフローパターン8分類
| フェーズ名 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 健康型 | + | − | − | 本業好調、内部資金で投資、借入なし |
| 攻め型 | + | − | + | 成長中、外部資金で投資加速 |
| 治療型 | + | + | − | 事業縮小・売却しながら返済 |
| 衰退型 | − | + | − | 本業不調、売却で返済、縮小傾向 |
| 勝負型 | − | − | + | 本業赤字でも投資を継続、外部資金依存 |
| 再起型 | − | + | + | 赤字&縮小中、借入で立て直し |
| 倒産前型 | − | − | − | 全てのCFがマイナス、非常に危険 |
| 安定型 | + | ± | ± | 健全経営、投資と借入のバランス良好 |
このパターンを活用することで、企業の「経営フェーズ」を視覚的かつ定量的に理解することが可能になります。
おわりに:キャッシュフローは「数字で見る経営の血液」
キャッシュフローを読む力は、経営者・個人事業主・投資家にとって避けては通れない基礎スキルです。
特に竹花氏が強調していた「CFは会社の血液の流れ」という表現は、経営と財務の本質をとらえた非常に的確な表現でした。
血液の流れが止まれば、人は死にます。同様に、お金の流れが詰まれば、会社は簡単に倒れます。
損益計算書や貸借対照表では見えないリアルな経営状態を知るためにも、今後もCFの読み方を繰り返し学び、実践に落とし込んでいきたいと思います。
